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「あゝ、よからう。大賛成ですよ」
男は病人から房一へぎろりと眼を移すと、
「まあ、葉書でざつと町内に出しときましたがね」
これはちっとも可笑おかしくない!彼ら二人は実にいい夫婦なのである。
「ねえ。――はやく。――患者ですわ」
房一は怒つたやうな嘲あざけるやうな調子であつた。その顔は何故か黒ずんで見えた。そして、目がぎらついていた。
この時、練吉が又小耳にはさんで訊き返した。が、明かにそれはさつきの小耳訊きとは様子がちがつていた。殆ど一人で盃を傾けていたせいもあるが、つい今まで沈んでいた練吉は僅かの間に一足とびに深い酔の中に入りこんでいた。
向ふの方には別の一かたまりがあつて、その中には堂本もいた。彼はさつきからそこに坐つたまゝ一言も口をきかないで、誰かが挨拶する度に慌てたやうにお辞儀を返していた。その隣りには大石練吉が近眼鏡の下で眼をぱちぱちさせながら、今夜もその色白な頬に上気したやうな紅味を浮かべて坐つていた。彼は坐つたまゝ絶えず首を伸して部屋中を眺めまはしていた。入つて来る人を彼は誰よりも先きに見つけた。そして、簡単にひよいと頭を下げてうなづいて見せていた。
「大きいとも、こんなのを見たのは久し振りだ」
「まあ、生れ故郷ですから」
「獲とれましたか」
「今日は士曜日で、半休だからね」
「うん、あの程度だと別に影響はないんだらう」