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「もはやお膳も据ゑていたゞきましたし、これで十分頂戴いたしたも同然でありますから、甚だ失礼ながらお先きに御免を蒙ります」
道平はゆつくりと首を動かして訊いた。
「うん、もうさつき帰つたよ」
「へーえ」
「鬼倉といふのは女を二人置いとるさうぢやないか」
「いや、人目がなきあそれどころぢや済まんでせう」
「ふむ、さうか」
「さうか、惜しかつたな」
これはちっとも可笑おかしくない!彼ら二人は実にいい夫婦なのである。
「あんたの犬かね」
「どうしたい、君はその恰好をまだ見せたい気かい」
と、練吉は急いで云つた。
「ズブリと相手の眼の中へさしこんでしまつたさうでね。――親方すみません、とあやまつたと云ふんだが、どうもね、――何しろ他の人の見てる前でやるんだから、たまつたもんぢやない」