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「どこの訴訟だ。なに鍵屋、うん、相沢か」
「小倉組の連中が来たちふぢやないかね。ほんとうかね」
「かういふ玩具おもちやのやうなものを出して、年甲斐もないことでした」
「それで――?あゝ」
房一は笑つていた。
「ほんとうに火事があつたのかい」
「いや、いや」
相沢は満足さうに馬の首を叩きつゞけていた。房一は思はず微笑した。彼にはこの時の相沢がひどく愛嬌あるものとも見えたからである。けれども、房一自身の顔にさつきから現れているものも、ちやうど子供が好きな物を前にしたときに見せるあの熱心さと同じ表情だつた。
と後を追ふと、徳次は
「すみましたよ。さあ。何でもありませんなあ。ぢき起きられますよ。ごく軽いんですからね」
一座はしづまり返つていた。何か緊迫した気配があつた。――とにかく、それは予定の中には入つていなかつた。こんな風に突然誰かが立上り、荒々しい声を張り上げ、何を云ひ出すか判らないのにぢつと膝をついて聞いていなければならぬとは!
練吉はそれなり黙つた。
「――?」